COLUMN  【コラム】メディカル・イラストレータのすすめ
 

          メディカルイラストの現状と必要について

 日本の医学界は日進月歩の進展をみせており、医療機器の技術革新は目を見張るものがあります。
癌治療での術後5年生存率は飛躍的に伸びており、絶望的であった原発性癌では早期発見が完治疾患として決して悲観的な病気ではなくなりました。
  このように医療現場や教育機関さらには医療関連開発メーカーの先進的な取り組みはますます我が国の医学領域の充実を実感するものです。
  その中で医学界様々な領域でささやかれていることの一つに、絵を描ける人材が日本ではいないことへの危惧が挙げられます。

  欧米では専門教育を受け修士課程をクリアしなければ、アカデミックな世界での描画はできないとも言われています。学術的な環境や臨床の場面での図譜化が如何に重要で必要な技術であるかが証明されます。
  デジタル化した今日では、手術シーンの記録にプロの専門カメラマンが配置しなければならない状況ではなくなり、素人がデジカメで簡単にきれいな写真が撮れるようになりました。
  しかしそれらをわかりやすく解説したり教育する場合には、解剖学的に間違いなくデフォルメすることで臓器間の位置関係を表現するように図画化しなくてはなりません。
  ドクターには求めることができない描画技術は、イラストレーターの役割として表現しなければなりませんがそのためには医学的な知識をもち、フレキシブルな思考感覚で、求められる的確なアングルで描画できなくてはなりません。

  ドクターは専門領域の研究あるいは臨床の場面の深い認識を求められますが、イラストレーターは全領域の術式から解剖、さらにはポージングや周辺機器の様子まで描画する知識が必要であり、幅広い医学の知識と表現的なテクニックを持たなくてはなりません。
  それらを習熟したイラストレーターが必要なのですが教育機関もないし、機会もありません。
  すべて経験的な描画と、編集者などを介しすでに発行されている文献などの資料をもとに描かなくてはならず、ドクターの納得できる描画はほとんど見込めないため、正確性のない安直な図版を使わざるを得ない結果になっているのが現状です。

  イラストレーションのなかでも社会的貢献度の高いメディカルイラストレーションの必要性と重要性を鑑みまして、一人でも多くのイラストレーターが医学的な知識を有して活躍できる環境を構築しなければなりません。

  全国の医学領域に関心のあるイラストレーター、およびイラストレーターを志望している方々の参集を求めて、メディカルイラストレーションの領域としての確立を求めていきたいと考えています。



 
 
 
 
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